第2回文芸社文庫NEO小説大賞 特別賞受賞
Special Interveiw
名古屋市在住の作家・玉木レイラさんの作品『若者たち ~心の旅はひとりきり~』が第2回文芸社文庫NEO小説大賞の特別賞を受賞し、電子書籍化された。20代の女性が、学生運動やフォークソングが盛んだった1970年代前半を舞台として設定するという構図には、新鮮な驚きがあった。そこで玉木さんに、作品執筆の動機やテーマづくりの背景、今後の執筆予定などを聞いた――。
「おー」って思いました(笑)。担当者の方から電話がかかってきて、「おめでとうございます」と。初めて書いた作品だし受賞はないだろうと思ってたので、嬉しすぎて言葉が見つからなかったです。すぐに両親にLINEで報告しました。
「すごい!!」っていうスタンプが10個くらい来ました(笑)。そのあと実家に帰ったら、私の大好きな甘栗が大量に買ってありました(笑)。
父の影響で昔からフォークソングが大好きでよく聴いていて。私に音楽の素晴らしさを教えてくれた父が喜ぶような内容を書きたいと思って、フォークソング全盛期の1960~70年代を舞台にしようと思いました。あとはより当時の雰囲気を出したり物語性を出すために、学生運動を絡ませました。
ないです。大体フォークソングの歌詞からその時代をイメージできたので。
あとは「今小説を書いていて……」と周りに言い始めたら、実際に学生運動に参加したことがある方から話を聞けたり、50~60代の方から当時の音楽業界の裏話を聞けたり。先日、かぐや姫の初代メンバーの大嶋三平さんと森進一郎さんにお会いしたときは、嬉しすぎて全く話が入ってきませんでしたが(笑)。
「無知の知」ということです。これは私が昔からお世話になっている社長さんが教えてくれた言葉なんですが、『若者たち』の主人公である大学生のトシは、頭でっかちで知識ばかりふりかざして、実際は何も知らない。知ろうともしない。でもそんな彼が、学生運動や女の子との会話を通して、自分が思っているより世界が広いことに気付き始めるんです。若い頃の刹那的な生き方もかっこいいとは思うけど、それだけじゃ何も得られないし、「自分は何も知らないんだ」と思った上でいろんな物事を見たほうが、得るものが多いかもしれないね、ということを伝えたいです。あとはこれを機にフォークソングを好きになっていただければ!
なんとなく「先生」って呼ばれたいなぁと思って(笑)。それぐらいの動機です。小説なんて書いたことなかったですし、書き方も分からなかったけど、Wordでバーッと書き始めたら、なんとなくそれっぽい感じにできて(笑)。あのとき書いてなかったら今頃どうなってるんだろう……って考えると怖いですね。本当に書いてよかった。
マルキ・ド・サドとスティーブン・キング。最初『若者たち』に出てくる布川(学生運動団体の代表)の演説は、かなりサドに影響を受けた過激な内容だったんですが、修正を重ねる中でだいぶやわらかくなりました(笑)。海外の小説家が好きなんですが、日本の小説家だと江戸川乱歩や谷崎潤一郎が好きです。
ありますね。いろんなお仕事をしていると毎日違う人に会うので、そこで人間観察をして「あぁ、この人はこういう行動をするのか」「この人はこういう言い方をするのか」と勉強になってます。おかげでiPhoneのメモ帳がネタの宝庫になってます(笑)。
今5つほど同時に作品を書いてるんですが、どれも音楽を絡ませています。フォークソングに限らず音楽自体が大好きなので、音楽×小説を根底に置きつつ、いろんな世代を舞台に書いていきたいですね。あとは講演会とかもしてみたい。女性が活躍する社会を引っ張っていきたい。夢を叶えて自立できる女性を増やしていきたいです。
とにかくやりたい事があったら、まずやってみてほしい。動いたら動いたぶんだけ得るものがあると思うんです。「あれがしたい」「これがしたい」と言うだけで行動しない人には、何も訪れない。自信がなくてもいいんです。とにかくやってみて! 不安だったらいつでも相談してください。私でよければいつでも力になります!!
学生運動が盛んだった1973年、大学では講堂建設に反対する過激的集団「愛と平和」による活動が活発化していたが、僕はそれを尻目にアメリカン・シネマやフォークソングにのめりこんでいた。ある日、「愛と平和」のカリスマ的リーダーの呼びかけにより、講堂に立てこもった学生たちは、周囲を取り囲む警察と対峙する。僕はその様子を、ひそかに恋心を抱く同級生のサチコと見物する。学生運動の意味とは何だったのか。『いちご白書』の時代を、新たな感性が描き出す。第2回文芸社文庫NEO小説大賞特別賞受賞作品。
玉木レイラ・著
定価:550円(税込)
書籍紹介