わたしは広島の上空から地獄を見た
エノラ・ゲイの搭乗員が語る半生記
爆撃機上からキノコ雲を撮影し
歴史的大惨事の目撃者となった曹長の人生の足跡を辿る。
かつてこの世で誰も目にすることのなかった日の出だった。トム・フィアビー少佐は照準点の相生橋に目を凝らし、ノルデン爆撃照準器のスイッチを入れ、落ちつきはらった様子で「爆弾投下」と告げた。その瞬間、リトル・ボーイはエノラ・ゲイの胴体から9,600メートル下の地上に向けて落下していった。目に突き刺さるような閃光が保護眼鏡を貫いたとき、尾部射撃手は失明したと思った。