今回の応募数は、絵本部門752本、ストーリー部門1636本、合計2388本であった。本コンテストの開催も17回目を迎えたが、今回も大変多くの方から作品をご応募いただいた。絵本ジャンルの衰えない人気の高さと文化的な価値が今回も実証されたように思われる。

絵本部門の優秀賞「フゥとヘェとハァ〜」は、ため息を題材に選ぶという発想がユニークで、擬音の使い方に工夫を感じた。大人と同じように子どもも“もやもや”を抱えているのであって、その発散をビビッドなイラストで絵本的に表現しているところが持ち味であった。同じく優秀賞の「ゴキブリのくつした」は、ゴキブリを主人公とした点に意外性があってよかったが、設定にやや違和感を覚えた。ただ、他の虫たちに関して体の構造を理解した上で的確に描いているところは評価したい。ストーリー部門の優秀賞「ピロロとニニの金メダル」は、文章を読んでいて絵が頭に浮かんでくるストーリーであった。少しずつ積み重ねたことが大きな成果を生むというテーマ性や素朴な文章表現は好印象だったものの、展開にもう少し工夫を凝らしてもよかったのではないか。「なりたくないウィンナー」は話の愉快さが大きな魅力となっているのだが、寛容性というテーマもうかがわれる懐の深い作品だと感じた。後半「ウィンナー」が「ソーセージ」にブレるといった表記の難点や設定の改善点が見られたので、更に作品を練っていただきたい。

今回は、設定やキャラクター造型に意外性が感じられる一方で、ストーリーとの関連性が乏しく、思いつきに留まっている応募作品も少なからず見受けられた。アイデアをうまく物語に落とし込むためのブラッシュアップにぜひ時間を費やしていただきたい。また「無題」という作品もあったが、タイトルは作品の顔であり、読者を作品世界に引き込むきっかけとなる要素でもある。タイトル案についてもなおざりにせず、創作上の大切なポイントとして熟考していただければと思う。