パリのこどもたち
人間が自己確立の過程で、
通り過ぎなければならない切実性をこめた短編作品集。
パリは濡れていた。寂れた薄暗い通りを、ジャン=ジャック・バローは大股で走っていた。彼は、パリ界隈ではそこそこに名の知れた舞台監督だった。ジャンはふと隣の席に女の子が座っているのに気がついた。ジャンは気安く声をかけた。女性や少女に対する細やかな神経を、彼は持ち合わせていないのだ。女の子は、声をかけられ、少しだけ身構えた。(表題作、ほか全21作の短編作品集)