それぞれの出版体験

Road to publishing

母の闘病の記録を書いて残そうと思い立ちました。

嶋田 富美子さん

ある日突然、今までほとんど病気をしたことがない元気な母が、がんの末期だと告知された。嶋田さんは大変動揺したが「何とか助けたい」と、抗がん剤だけではなく健康食品、枇杷の葉のお灸や鍼治療など、様々な健康法や治療を試した。治療で家族の生活も一変し、苦労は絶えなかったが、努力の甲斐もあり、医者にも「ミステリーだ」と言われるほど回復していった。
必死で病気を調べていた際、闘病ブログの書き込み・やりとりが大変参考になり、心の支えにもなったそうだ。母の病状が落ち着いてきた頃「この体験を発信することで誰かの役に立つのではないか」との想いが強くなった。以前から更新を続けていた闘病ブログと投与した薬や医者との会話を記録していた手帳を、B5の国語ノート6冊弱にまとめ、文芸社に持ち込んだ。
担当者からのアドバイスで時間軸に沿って書き直した後、編集作業に入った。電話で矛盾点の指摘を受けたことが印象的だったという。「第三者が読む時のことを考えたアドバイスをもらえました。一度に直す原稿量も丁度よく、コンスタントに送られてきたので、投げ出さずに進めることができました」
表紙・挿絵には、絵を教えている母の絵を使うことにし、母の病気をきっかけに嶋田さんが作詞・作曲したCDも付けた。しかし、「本が完成するまでは頑張りたい」と刊行を楽しみにしていた母は、残念ながら完成間近に病状が悪化し亡くなってしまった。
出版後、母を亡くした悲しみから立ち直れずにいたが、付属のCDで歌を担当したシンガーソングライター、桂宏美さんが自身のコンサートに合わせて出版記念パーティーを開催してくれた。会場で出会ったラジオ関係者の依頼でラジオに出演し、新しいCDも出した。また、がん患者やその家族を支援するチャリティ活動に参加する等、出版を機に声をかけてもらうことが増え、徐々に活動の幅が広がっていった。
「母は本を手に取れませんでしたが、本の完成を誰よりも喜んでくれていると思います。母のおかげで、とても貴重な縁に恵まれました」

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