それぞれの出版体験

Road to publishing

ベランダのきなこちゃん

ふじい ひろみさん

ベランダからたくさんの贈りものを届けてくれるのら猫。猫と心が通じ合う本当にあったお話。そんな心温まる絵本『ベランダのきなこちゃん』を出されたふじいさんからコメントをいただきました。

「この出来事は絵本にぴったりだから、いつか作って残したい!」
ことのはじまりは、ベランダに一匹ののら猫が来た日にさかのぼります。猫はその後もたびたびやってきては、色々な物を運んできてくれました。のら猫にもいつしか名前がつき、我が家では「きなこ」と呼ばれるようになりました。当時私が習っていたこともあり、彼女との出会いからこれまでの日々を描いた作品は、まずは絵本講座でつくることに。

この手製の本は、当時入院していた母に病室で読んであげました。微笑みながらも、ときおり深く頷いたりして、繰り返しページをめくってくれたのをよく覚えています。

やがて、そんな母ともお別れする日が来ます。そしてなんとその当日に、絵本出版のお話を文芸社さんからいただいたのです。私が講座で作り母が読んでくれた絵本、実はそれを文芸社さんに送ってあったからです。下絵を手伝ってくれた長女の旦那さんと、次女を含む家族全員が最期の母との場にいたので、「ぜひやりたい!」と盛り上がり、出版することがすぐさま満場一致で決まりました。

新装する絵本『ベランダのきなこちゃん』は、フェルトを使って制作しました。手芸好きの母だったので、遺影に「お母さん、一緒に作ろうね」と語りかけながら作業するのは、私にとっては癒しの時間であり、母に向けては供養の時間となりました。

父の介護も同時進行。急ピッチで制作を進めて出版した絵本でしたが、文芸社刊の『ベランダのきなこちゃん』は、どうにか父が亡くなる前に見せることが出来ました。この2冊の絵本が、両親への最後の贈り物になったと思っています。

そして5人の孫達に読み聞かせている今、この絵本は3世代に渡り、予想外の大きな喜びとなっています。そんな家族を楽しませ喜ばせてくれた主役きなこに、メッセージを贈りたいと思います。

《きなこへ》
ベランダに色々な物を運んできたのら猫さん
不思議でおもしろい出来事だったから、絵本にしてみました
今はすっかりお婆ちゃんになったあなたです
10年後、このベランダにはいないでしょう
でも、絵本を読む孫達へ、あなたのお話は届きます
あなたが運んできた、一番ステキな贈りものでしたね
ありがとう、きなこ

当社刊『ベランダのきなこちゃん』は、紙に印刷された絵本ではありますが、そんな紙面からもフェルトを使用した独特な温もりが伝わってきます。感謝の気持ちの大切さ、世代を超える絵本のチカラをあらためて教えてくれたエピソード。ふじいさん、ありがとうございました!

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