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恋愛は決して若い男女の特権ではありませんから、さまざまな形が存在します。さらには、アニメやゲームの登場人物、テレビの向こう側のアイドル、あるいは、ともに暮らす動物や身のまわりのモノでさえ、恋愛対象になるといって差し支えないでしょう。そして古今東西、純愛を描くだけが恋愛小説ではないというのも、誰もが知るところです。
ただ、書き手側に立つときには、気をつけなればならないことがいくつかあります。その筆頭が、恋愛小説は書き手自身の実体験や想像(妄想?)を反映させやすいため、読者を置き去りにする“独りよがり”の作品になりやすい、ということ。当事者にとって自分の体験や想像は、何ものにも代えがたい大切なものであっても、読者がそれに興味をもつかどうかは完全に別の話です。他人の恋愛話、ノロケ話を延々と聞かされるのは、誰にとっても退屈なものですからね。
もしあなたが、はじめて恋愛小説を書こうとしているならば、すぐにでも作品に採用できるテクニックがあります。それは「三角関係」を取り入れることです。登場人物Aと登場人物Bの恋愛を描いても、それだけで読者を牽引するストーリーに仕上げるにはかなりの筆力が必要です。そこで単純にCを登場させ、A、B、Cが織り成す恋愛模様(=三角関係)を描くだけで、あらま不思議! ドラマが発生するのです。理由は「三角関係は多くの人が共感しやすい関係構造」だからです。
なぜ共感しやすいのか。それは、多くの人が恋愛の三角関係を経験しているから、というわけではありません。三角関係は、人間の「欲望」の根本となる関係構造といえるからです。これはルネ・ジラールというフランス出身の文芸批評家が唱えているのですが、簡単にいえば「人が何かを欲望するとき、それはその人自身の欲望ではなくて、他人の欲望を模倣している」ということです。つまり、AがBを欲するのは、CもまたBを欲しているからだ、というのがジラールのいう「欲望の三角形」です。
たとえば、ある有名人が着るブランドの服をあなたが欲しいと思うとき、「あなた」がA、「ブランドの服」がB、「ある有名人」がCに代入されます。あなたはそのブランドの服を純粋に欲しているのではなく、ある有名人が着ているという事実を媒体として欲望している、ということになります。広告宣伝というのは、こうした「欲望の三角形」を利用しているものなのですね。ちなみに「欲求(食欲や性欲)」は、ここでの「欲望」とは違うものとして定義されています。
「恋愛をそんなシステマティックに考えたくない!」と抵抗感を覚える方もいるかもしれません。もちろんピュアなことは大事です。考え方はそれぞれ自由です。けれども、読者に読まれてナンボの恋愛小説を書くとなれば、個人の恋愛観を滔々と表現すれば済むというわけではありません。甲子園を目指す高校生たちを描く野球ストーリーだって、世界にひとつしかない宝物を探しだす冒険ストーリーだって、同じ目標を目指す=同じ対象を欲するライバルが、主人公と同等以上に魅力的に描かれるからこそおもしろいはずなのです。
それと同じように、恋愛小説においては、登場人物AとBの恋愛をいかにドラマティックに描くかに終始せず、登場人物Cをいかに存在感のあるライバルとして描けるかが最大のポイントだといえるのですね。真に迫るドラマは、彼がもたらす人間関係の軋轢のなかから生まれてくるものなのでしょう。
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